お母さんたちに囲まれて


今学期も面談が大方終了に近づきつつあるので、気づいたことや反省を書き記しておこうと思う。最初は手探りで何も分からないまま、面談をしていたが(というより全てにおいてそうだが)、ほんの少し掴めてきたような気がする。悩んだ時やおごりの気持ちがある時は、これを見返すつもりで書いておく。


まず、面談を実施する上で、最大の目的は「生徒さんやお母さんに元気になって帰ってもらう」。もう、この一点に尽きるとおもう。確かに生徒さんそれぞれ、悩んでることや改善点はあるのかもしれないが、元気が出ないと勉強なんてやる気にならないし、子育てのモチベーションが高まらないと、息切れしてしまうこともあるかと思う。

塾のポリシーとして「コスパのいい塾でありたい」と思っている。それは、授業料がリーズナブルという意味ではなく、漫然とモヤモヤすること、過度に不安になることが、うちの塾に来たら、トータルで考えると少なかったなぁと思ってもらえたらという意味である。

私自身、マイナスなことに蓋をして見ないふりをし、社交辞令で誉めそやすようなことは好まないが、塾で生徒さんと時間を共有して感じた意見を、いかにパワーとなってもらえる言葉に変えることが一番大切だと思う。


次に、漫画やドラマなどで「お母さんはなんでもお見通しよ、フフフ」みたいな場面があるが、面談のたび、そのようなことを実感する(実際にお母さんたちがフフフと言ってるのではない)

私ははじめてのことばかりで、生徒さんのことやいい教育法など、気づいたことが大発見かのように思って歓喜するのであるが(う〜ん!なんとも恥ずかしい)、お母さんはそんなこと、もう既に分かっておられるなと毎回痛感する。それぞれのお母さんで、重視するお子さんの情報にプライオリティはあれど、全体的に見通されているなぁというのが私の感想である。

塾でしか分からなかったことが、これから出てきて、お母さんに「そんなこと知らなかったです!」とびっくりしてもらえたら、それはそれで嬉しいことではあるが、そんなことはきっと稀だろうなぁ。


そして、ご家庭での育て方にいいも悪いもないということである。いや、いい育て方っていうのはあるのかもしれないが、悪い育て方はない気がする。

生徒さんの性格や家庭状況もあるので、親御さんの子育て方針や歩まれてきた過程は本当にバラエティに富む。その結果、現れる子どもの表出はさまざまで、たまにその一部分がきっかけとなり、お母さんがすごく悩んでしまうことがある。「私の育て方が悪いんです」「私が弱いからダメなんです」と仰る方がいるが、全員の生徒さんをある意味蚊帳の外から見ている私からすると、そんなことないですよ、と素朴に思う。

これは決してリップサービスではない。だって、どんなに優秀で、どんなに人生がうまく行くように成長したとしても、突っ込まれることなんていくらでもあるもん。例えば成績、性格、就職、全てうまく行った人でも見方を変えれば「あの人は苦労したことがないからイマイチ深みがないよな〜」と言われることもあるだろうし、実際そういう現場を何回か見たことがある。自分だってそのような人物評をしたこともある。

裏を返せば、なんでもかんでも突っ込むことができるし、いくらでも非難できると思う。そして短所は長所であり、ピンチはチャンスと繋がっていると思う。ちょっとしたことが今たまたま波及効果で、悩みになっているだけだから、そんなに自分を責めないで欲しいと思う。

しかもタチが悪いのは、女の人というのは、「誰かの代理として」周りから非難されたりいじめられやすい性質があるように思う。例えば、お姑さんにご主人のことで注意された人類の歴史、何百年何千年。女性はサンドバッグのように見なされることがあり、子どもを産んだ後、そのことが余計に女性を悩ませることが多いと思う。

だから過度に思い悩まないでほしいし、私達もお薬ではないから即効性のあることはできないが、一緒に事態が好転するまで待ちましょうよと思っている。

しかも、子育てになると「うまくいかなきゃ」という強迫観念が、近年社会に蔓延しており、そんなわけないやん、と個人的には思ってる。そもそも、一事が万事うまくいかないことばかりなのに、なぜ子どもは美しく育てれると想定されるのか。むしろ社会的に見ていわゆる「ダメなもの」が出てきても全くおかしくない。人間なんて結局全員不潔なのだから。うまくいかなくなってからこそが、人生で、それに向かう知性や元気の方が圧倒的に私は大事だと思うので(私自身、強くは生きてはいないが)、ご自身ばかり責めないでいただきたいなといつも思う。


また、できる範囲では自由な塾がいいなと思っているので、スケジュール調整は柔軟に対応しているつもりではある。そうなると、自分達で決めたこととはいえ、疲れることもあるし骨の折れることもある。連絡のことにせよ、進路相談にせよ、もうちょっと早く言ってほしかったなとか、連絡欲しいなという愚痴的なものは存在はする。

でも、生徒さんやお母さんのことを嫌いになるとかはない。

なぜなら連絡がうまくいかない理由や、進路相談などの価値観において、そのご家庭の状況を考慮すると納得がいくし(要は皆さんお忙しい)、お母さんの性格はこうなのかな?今はこういう感じなのかな?と考えるほど(その類推は必ずしも正解とは限らないのだが)、単純接触効果もあり、親近感が湧いてくる。ということで、勝手にほんのりとした好意を抱かせていただいてる。

塾の外で、生徒さんのご家族とばったり会ったり、一方的に目撃することがあるが、新鮮な気分というか、爽やかな気分になるのが不思議である。そのご家族が、塾と違う場所でも存在している、というのを生で確認できてうれしいのかなぁ。当たり前のことではあるのだが。とにかく理由は分からないが、気持ちが明るくなるのである。


十数名のお母さんと接していると、この人数でもバラエティに富むなーとも思う。「子どもはみんな個性的」とよく言われるが、お母さんも個性がそれぞれあるな〜と思う。塾で、保護者交流会といったものはしたことがないから分からないけれど、このお母さん同士、気が合うだろうなぁと思ったことはほとんど思ったことがない。それくらいお母さんもバラエティに富まれているのである。

たまに「私はママ友いません!」という人がいるが、確かにこんなに色んなタイプの方がいると、気が合う人を見つける方が難しいのかもしれないな〜と少し納得したりもした。


授業を担う講師は、生徒さんの成長だけにエネルギーや指導を全振りしてもらった方がいいなと思っている。

私も何より生徒さんの幸せを願っているのだけれど、管理人としての私はお母さんのご要望や悩みにできる限り応えたいなと思っている(とは言え、力不足なことが多いが)

なぜなら、こちらは人生のほんの一部分、せいぜい週12回、生徒さんの接するだけであるが、生徒さんとお母さんの生活は塾の外でも続いているということを決して忘れてはいけない。これは当たり前のことだけど、塾側が忘れやすい事実であり、重要なことだと思う。


ということで、最後に、私は幸せものなのかもしれないな、と思う。価値観は人それぞれで、個人的にはあまりそう思えない時期があったので、「家族って愛!家族って幸せ!家族って最高!」とは全てにおいて言い切ることは控えたい。

ただ、この人々の渦に巻き込まれてることは、私の気持ちの安定に繋がっていると思う。生徒さん・塾・保護者さん、3方向で食い違うこともあるかもしれないが、「生徒さんといい方向に歩んでいきたい」という目的はみんな共通であるからだと思う。そして、その目的は「家族全員が安心できるものでありたい」ということにうっすら繋がっているのかもしれない。

よそのお家のことかもしれないですが、私の心の栄養になってると思います。なんだか、ありがとうございます。塾を始めて、安心感が得られるなんて、予想外の感想でした。


塾を始めて、面談にはお母さんが来られるので、今回は主語がお母さんになってしまいましたが、お父さんとの連絡や面談も大歓迎ですので、どうかその時はよろしくお願いいたします。



夏の夕暮れ。なんば高島屋店、無加工。