放送大学を卒業しました




一年の浪人生活を経て、私は京都のある大学へ進学した。薬剤師の卵としてそこそこに学生生活を送っていたが、体調を崩したことをきっかけに、4回生の頃、私は休学する。その後結局、退学することになってしまった。退学時はせいせいしていたものの、年月が経っても京都駅を通るたびに、なんとなく居づらい気持ちになってしまう。順風満帆ではなく、常に「自分は何をすればいいのか」「自分にできることは何なのか」という問いが頭の中をつきまとった。その中で、身近にあった教育や医療に触れるたび、ある資格が欲しいという気持ちが強くなったので、大学へ行き直すこととなりこの春に卒業することとなった。今回は、再入学〜卒業までの過程と感じたことを書いてみようと思う。


 何年も前に起こした行動も含まれており、正しくない情報や終了した制度もあるかもしれないので、話半分に読んでいただければ幸いです。


(1)退学した大学へ相談する

 元いた大学へ戻るという案。「退学したのに元に戻れるの?」と驚かれるかもしれないが、私のいた大学は条件付きでYESだった。筆記試験と面接試験をクリアすれば、戻れるらしい。しかし当然のことながら大学側はあまり歓迎していない様子だった。

 理由として、

①退学してから5年以上経っているので、カリキュラムが大幅変更しており、個別の指導が必要となること。

②研究室の先生(いわゆる教授)の退官が目先に迫っており、最後まで面倒を見れない。

 おそらく主に①の理由で、歓迎されていなかったように思う。去る者追わず、という言葉があるが、退学する前に引き止めているのだから「言わんこっちゃない」と思われても仕方がない。そして、休学退学したりと、いわゆる「ワケあり」の生徒を普通に指導するだけでも苦労を伴うのに、そこに個別のカリキュラムを作った上での指導というのは面倒と思われたのかもしれない。


 そこでもう一つ提案していただいたのは、私のような生徒を受け入れている薬科大学があるので、そこを検討しみてはという話だった。東北と近畿地方の学校を一つずつ紹介していただいた。

 薬学部を卒業するにはあと最低3年通い、定期試験、CBTOSCE、病院実習、卒業論文、国家試験。そして、学費のハードルをクリアする必要がある。これらを考慮した上で、そこまでの費用と労力をかけ薬学の学位をとることができるのか?ないし必要なのか?というと、やはりNOだった。この案は却下となる。


(2)学位授与機構で学位を取る

 大学に通わず、卒業資格を取得できるのなら理想的だなと思い始めた時に、学位授与機構という独立行政法人を知る。大まかに言うと、単位証明書とレポートを提出し、審査が通ると学位を貰えるという仕組み。

 退学するまでに取得した単位を元いた大学へ問い合わせると、実習の単位が微妙なところだったが合計単位数は十分満たしていたので、一か八かで自作のレポートを提出し、審査をしてもらう準備を始めた。(学位の種類によって必要な単位数は違うのでお気をつけください)

 ということで、レポートを準備したものの、待てど暮らせどその年度の募集要項がホームページにアップされなかったので(私が見落としていただけ?)、面倒に思い始める。ということで、準備した資料を提出もせず、話は流れた。


♪学位授与機構 資料取り寄せ→https://www.niad.ac.jp/n_gakui/application/shinseishiryou.html


♪実際に学士を取得された方のブログ→ https://mimisenpai.hatenablog.com/


(3)過去の自分を忘れる

 その後、ある国家資格が新設されたことを知る。

 「今までやってきたことを活かして学位を取得する」ことに、その頃は辟易し始めており、過去の自分を忘れ、新たに大学へ行き直そうと決意する。

 そして調べていくうちに、放送大学がその資格のためのコースを設置したということを知る。放送大学。授業料、他の大学に比べると安い。通学しなくていい。自宅から徒歩5分。理想的。一方、放送大学かぁ………

 無知で恥ずかしい自分を披露するが、自分にとって、放送大学が取るに足らない大学のように感じた。しかし、もう、お茶を濁している時間がもったいない。資格も大学もやっぱり個人的には好きになれないけど、必要ならばやってやんよぉ入学しよう。


(4)放送大学キャンパスライフ

 放送大学への入学は、高卒資格があれば、門戸は広い。これまでの苦労が嘘のように入学手続きが順調に進む。以前取得していた単位が認定され、三回生として、キャンパスライフを始めることになった。と言っても、面接授業と単位認定試験以外は学習センターへ行く必要はないので、ほぼ自宅で動画や教科書を見て、勉強する日々。しかもコロナをきっかけに、単位認定試験でさえ自宅受験となったこれが追い風となり、私は順調に単位を取得することができた。(と言っても試験には制限時間があるので、ラッキー!と思った人は気をつけてください)

 放送大学のいいところは、Webサイトがしっかりしているということである。いわゆる普通の大学よりも発達しているのかもしれない。提出課題や受験、結果閲覧も全てがWebサイトで完結する。

 また、放送大学生の方々のTwitterを拝見させていただいていたが、勉強に対する態度がとてもフレッシュで、大変驚いた。これぞまさに生涯学習。2年間の学生生活を経て、この3月に私は卒業することができた。


♪放送大学→ https://www.ouj.ac.jp/



(5)資格取得について

 昨年の夏に合格することができた。学生の立場から取得するコースと社会人から取得するコースがあり、両方の可能性を見据えて色々とトライしていたが、後者の方で、無事、合格をいただいた。そして、スタート地点に今、やっと立ったところである。


 キャンパスライフや資格試験、そして塾や他の仕事など、ありがたい環境にはありながらも忙しく、昨年は猛暑も重なり心身共にきつかったように思う。この数年のことは、あまり記憶がない。



放送大学大阪学習センター



 そして、一度諦めた大学の学位を取得するにあたり、感じたことは、「医歯薬の大学を中退すると結構ツむ」ということだ。費用的にも時間的にも。コスパ、タイパという言葉が私は嫌いなのに。医歯薬は、6年制であり、他の学部生のように4年通った所でなんの保証もない。一般的な大学生が卒業に必要な128単位を満たしていてもだ。これは至極当たり前の話ではあるが、いやいや通学しながら結局は中退し、その後のことを考えると「こんなことならば4年制の大学に初めから入学しておけばよかった」と頭をよぎった。

 医歯薬を安定した収入が入ってくるからと、勧める保護者様や、進学する学生さんは、こういうリスクもあるということは知っておいてほしいです(私のようなケースは少ないようで案外おり、同級生は国家試験直前に私と同じようなことが起きたし、その後も違う学年の人の相談を受けることがあった)。

 医学部志望の同級生が昔、「お金のために医者になる」となんの迷いもなくキッパリと話してくれたが、そのくらい堂々と開き直れるのならばいいのかもしれない(熱意がただあるからと言って良い医療者になれるとは限らないし)。が、一方で私は大学に対して本当はやりたいことがあるのに、目の上のたんこぶというような目線を向けていたように思う。

 将来のキャリアや収入のプランが、自分の本当にやりたいことと一致しない場合、悩むことになるが、どちらも大切なのは事実だし、その都度比重を変えてこなすしかない。とは言え、今から思えば、どこに身を置いても、楽しさを自分なりに見つけれる方がいいのだろうなとも思う。私は「将来のため」という意義は見出していたが、「楽しさ」を見つけようとする努力はしていなかったように思う。大学の近くには自然もあって、寒いけれどいい所にあった。そんなことに10年後気づく。

 また日本の医療は、基本的には許認可事業なので、(万一)国の制度が変わると収入を始め、色々な状況が変わることも覚えておいてほしいなと思う。


 それにしても人はなぜ大学を辞めるのか。このような道のりを経ても、大卒資格や学歴ってやっぱり取るに足らないことのように個人的には思っているし、それを活かす職に結局ついていない。でも大卒資格がもらえるのなら、取得しといた方がお得であることは間違いないと思う。でもなぜ辞めてしまい、途中で迷走してしまうのか。

 自分以外の人を見渡しても、「今じゃないといけない」「今やりたいことがある」と思い込んで辞めてしまう人が多い気がする(成績不振や学費のことで辞めてしまう人もいるけれど)。

 そしてこれは、「幼い頃〜それまで周りに合わせすぎて疲弊した人の話」でもあるような気もしている。それは親の期待や希望に応えた結果であり、往々にして周囲にも気を使いすぎて(気を使うというより恐れていると言った方が正しいのか)、自己開示や適切な自己評価、コミュニケーションが下手な人が多い。中退と共に足枷が外れ自我が爆発し、他人の視点を全く無視した行動を取り始める。ゆえに他人から見ても迷走しているように見える。同じ位置から他者へまなざしを向けることが本当は大切なのに、こういう人は他者を恐れるか、全く無視するかの二者択一になり、白か黒かの極端な人という評価となる。大学を辞めた後の進路に加え、自我に向き合う機会を設けられてしまうのだと思う。

 実際、自分がスッキリし始めたなーと思ったのは、周囲を恐れるのではなく、周囲を同じ高さで正面から見始めた時だったと思う。自己開示と自分のやりたいこと、そして周囲が何を求めているのかのバランスが取れ始めたように思う。自分のやりたいこと、自分の考えや気持ちも過度に守りすぎず譲歩しすぎず、になった。

 このように迷走&悩んでいる時、何もしていないように見えるので、大体サボっていると思われ、周りは「成長」や「変容」を求め始める。人間は同じ状態が続くと飽きてくる性質を持っているし、その人のことを想ってのこともあるので、仕方ないし言われて当然のこともあるよな〜と今となっては私は思うが、その渦中にいる人はもしかしたら疲弊して、心や体が大出血しているかもしれないので、発言には気をつけたいなと思うし、それをわかっていながらも必要だと感じたら敢えてアドバイスしようと思う(もしそういう生徒さんがいるのであれば)。

 また放送大学といえど学費もかかるし、なかなかどうして机に座って学ぶことが苦手な方、仕事や子育て・介護でとてもお忙しい方もいるので、高卒でも社会人でも大学を諦めるな!みたいなことは気軽にも無責任にも言えないな、と今現在も思っている次第である。実際、入学して卒業までに辿り着ける人は5〜6割くらいだそうです(諸説あり)。


最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。



先週亡くなった犬。彼は私の調子がおかしくなってきた頃に我が家に来てくれました。
そしてこの2年間、私が勉強する姿を横で見守ってくれていました。
その時に撮った写真です。今までありがとう。